毎回、不可解な事件の真相を暴いていくドラマ『アンナチュラル』。
最終回寸前の『アンナチュラル 』9話のあらすじについて迫っていきたいと思います。
※ネタバレ部分があるのでご注意を・・・
9話のキャスト
本作は、設立して2年弱の不自然死究明研究所(英:Unnatural Death Investigation Laboratory)= 通称UDIラボという架空の研究機関(公益財団法人)を舞台に展開します。
UDIラボとは、日本における不自然死(アンナチュラル・デス)の8割以上が解剖されないままという先進国の中で最低の水準という解剖率の状態を改善するために設立され、国の認可を受け全国初の死因究明に特化した調査を行い、警察や自治体から依頼された年間約400体の遺体を解剖調査しているという設定なのです。
ここに勤める法医解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)を中心に、ベテラン法医解剖医の中堂系(井浦新)、三澄班臨床検査技師の東海林夕子(市川実日子)、三澄班記録員の久部六郎(窪田正孝)、所長の神倉保夫(松重豊)らが協力し合いつつ、毎回さまざまな「死」を扱いながら、その裏側にある謎や事件を解明していくというドラマです。
各回の事件と並行して、物語では一家心中事件の生き残りであるミコトの生い立ちや、中堂の恋人・糀谷夕希子(橋本真美)が殺害された未解決事件が連続殺人である可能性が浮かび上がります。
重い過去にとらわれた時に倫理を逸脱する行動に走る中堂に対し、ミコトは問題の事件解決に協力して彼を止めようとします。
やがて判明する26人もの女性を手に掛けた連続殺人犯は、殺人の証拠が存在しないことを盾に罪を逃れようとします。
UDIラボの面々は組織存続を賭けてそれを追求し、最終的に勝利を収めるのです。
危機を脱したUDIラボは、大切な人を亡くしながらその後も生きる人々の未来のため、この世の「不条理な死」と戦い続けてゆくのです。
あらすじ
9話は、物語の縦筋、つまり中堂の婚約者を殺めた連続殺人犯の正体に迫るストーリーでした。
中堂の殺された恋人・夕希子の口中には、赤い金魚のような痕が残されていました。
その後、同じような傷を残して死んだ女性が2人現れます。
“赤い金魚”は、犯人を探し出す唯一の手掛かりとなっていました。
今回、赤い金魚の正体は「おさかなカラーボール」と判明。
魚の凹凸がついた動物用のおもちゃのボールを口の中に押し込まれ、凸部分が口内の粘膜を傷つけていたとわかります。
これも予想外でした。
宍戸が預けた封筒、無事に六郎の手に渡ってよかった…と思ったら、宍戸が犯人と繋がっていました。
「やられた~。」わたしは宍戸がジャーナリズム魂に突き動かされて中堂さんを追っているのだとばかり思ってました。
完全に騙されました。
はっきり言って、犯人には高瀬よりも宍戸のほうがしっくりくるんです。
でもそれだとストレートすぎます。
宍戸はスクープ記事を書くために、高瀬に協力したのかもしれません。
六郎にヒントを与えた理由もよくわからないです。
中堂が高瀬を襲うように仕向けるためだったのでしょうか。
宍戸が六郎に渡した「ピンクのカバ」の絵は、夕希子が殺された日に持っていたものでした。
殺されなければ、2冊目の絵本になっていたんです。
そのほかにも、彼女が履いていた靴やカバンも見つかっておらず、ミコトは「室内で殺されたのでは?」と推測しました。
もし、高瀬が犯人ならば…
中堂さんに逆プロポーズした夕希子が新居を探す過程で不動産屋の高瀬と知り合い、部屋を内見している時に殺されたと考えると、辻褄が合います。
犯人は、人生の転機を迎えた未来のある女性ばかり狙っていました。
高瀬は、「Drill(ドリル)」や「Knife(ナイフ)」、「Nicotine(ニコチン)」など、死因の頭文字でアルファベットを完成させることが最終目標だったようです。
宍戸は前回もアルファベットの歌を口ずさんでいたし、自らの記事に英語訳を書きこんで六郎に送りつけたりしていたので、気づいていたようです。
あるいは、これを考えたのは宍戸で、高瀬に実行させたのか。
いずれにしても、こんな真似をする意図がわかりません。
アルファベットの数だけ殺人を重ねたのなら、高瀬は26人殺したことになります。
ネタバレ
今回のポイントは、「ミスリード」の使い方でした。
「ミスリード」とは文字通り「受け手(この場合の視聴者)を誤った方向へ誘導すること」を指します。
様々な作品で用いられる鉄板の方法論で、特に刑事ドラマやミステリー作品では、「こいつが犯人かと思わせておいて〜!こっちでした〜!」というオチが待っていることが多いのです。
しかし、『アンナチュラル』9話では、このミスリードを煙幕に活用しつつ、必要以上に引っ張らずにタネ明かしをするという、言うなれば「ミスリードの存在そのものがミスリード」のような妙技をキメているのです。
ここに痺れました。
具体的には、宍戸(北村有起哉)というキャラクターでした。
この宍戸というキャラクターはいわゆる「ラスボス」のような雰囲気で物語序盤から登場しており、視聴者の多くが彼がクライマックスで本筋に絡んでくることをうっすらと予想していました。
そして案の定、六郎は彼に疑いをかけるに至ります。
「もしかしたら連続殺人犯は宍戸さんではないのか?」。
記者が連続殺人を犯し、その遺体遺棄の場所やタイミングで取材を行う。
自作自演でスクープを創り出す。
なるほど、「よくある」タイプの動機です。
これなら、宍戸本人が異常な殺人犯でも、スクープのために倫理のタガが外れている男でも、どちらでも説明がつきます。
そして、その真実に迫ろうとする六郎に対し、脚本は宍戸本人に「それっぽい」台詞を連発させます。
わざわざ死因をアルファベットになぞらえた連続殺人をほのめかす説明をさせたり、犯人を褒めさせたりします。
自己顕示欲から犯人像を褒め称える殺人犯、という構図は、この手のミステリードラマではよくあるシーンです。
宍戸のキャラクター的にも、自然な言い回しである。
とはいえ、ここで次の疑問が脳裏をよぎります。
「仮に宍戸がミスリードだとしたら、誰が犯人なんだ?」。
①宍戸がミスリードと見せかけておいてやっぱり真犯人
→あり得ます。
けども、結局安直さは拭えません。
『アンナチュラル』的には簡単すぎます。
②宍戸はやっぱりミスリードで、犯人は他にいる!
→しかし犯人候補がいないのです。
UDIや警察サイドを含め、すでに登場しているキャラクターの中に裏切り者がいるとは思えない(思いたくない)のです。
③宍戸はやっぱりミスリード。
真犯人が新登場!
→消去法ではこれが自然ですが、今更ポッと出のキャラクターが真犯人だなんて、それはそれで興ざめでもあります。
一瞬で脳裏を駆け巡る①〜③の予想。
予想はできないが、④以降の新たな答えがこの展開の先にあり得るのでしょうか?
結論は、①②③すべての合わせ技でした。
こんな展開を一体誰が予想できたでしょう。
宍戸が真犯人というミスリードはそのままミスリードでしたが、真犯人と宍戸はすでに通じており、しかも視聴者が完全に死角に配置してしまっていた火災事故の被害者・高瀬こそが真犯人だったのでした。
もちろん、「高瀬もまだ真犯人ではない」という可能性が十二分に残されており、三重のミスリードが組まれているパターンも想定されます。
大穴の木林や複数犯といった線もあり得ます。
最後まで気が抜けません。
『アンナチュラル』は、十話が最終回です。
中堂は復讐にどう決着を付けるのでしょうか。
ミコトは中堂の暴走を止められるのでしょうか。
六郎はどうなるでしょうか。
宍戸は、高瀬は、どのような思いで犯行に関与していたのでしょうか。
またもやドカンと心が沈むことは間違いないでしょう。
しかし、『Lemon』の歌詞の最後が「今でもあなたはわたしの光」で締められていることが、かすかな希望を感じさせてくれるのです。
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